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【品目・地域別】食品輸出の最新ランキング2024!今後の動向についても解説
日本の食品・農林水産物の輸出品ランキング2024(1-6月)
2024年前半(1月〜6月)の日本の食品・農林水産物輸出額は7,013億円で、前年同期比で1.8%減少しました。
ALPS処理水放出以降、中国や香港向けの輸出は減少していますが、一方それ以外の国や地域への輸出額は14.3%増加しています。
以下は、輸出額の増加が大きい上位3品目です。
品目 |
増加額(増加率) |
ソース混合調味料 |
+54億円(+22%) |
緑茶 |
+43億円(+37%) |
ビール |
+24億円(+35%) |
日本食の普及に伴い、欧米中心に多種多様な調味料、日本式カレー、日本製マヨネーズなどの需要が堅調となっています。
また、健康志向の高まりなどの背景により、欧米を中心に抹茶など粉末茶の需要が増加しました。ビールに関しては韓国での需要回復が大きな要因です。
一方、輸出額が減少した主な品目は、以下になります。
品目 |
減少額(減少率) |
ホタテ貝(生鮮等) |
-142億円(-37%) |
なまこ(調製) |
-49億円(-47%) |
ウイスキー |
-45億円(-15%) |
ホタテ貝、なまこは、中国や香港の日本産水産物の禁輸措置の影響が大きく、さらに中国の景気後退によりウイスキーの輸出額も減少しました。
参考:農林水産省「2024年1-6月(上半期)の農林水産物・食品の輸出実績」について
参考:農林水産省「2024年上半期(1-6月)における農林水産物・食品の輸出実績」について
- 品目別の輸出額ランキング
2024年1月から6月における日本の食品・農林水産物の品目別輸出額ランキング(10位まで)は、以下の品目になっています。
順位 |
品目 |
金額(百万円) |
前年同期比 |
1 |
アルコール飲料 |
66,820 |
-4.7% |
2 |
畜産物 |
49,735 |
+2.9% |
3 |
ソース混合調味料 |
29,793 |
+21.9% |
4 |
清涼飲料水 |
28,496 |
+4.4% |
5 |
ホタテ貝(生鮮・冷蔵・冷凍等) |
24,064 |
-37.2% |
6 |
真珠(天然・養殖) |
21,771 |
-2.5% |
7 |
ぶり |
20,640 |
-14.2% |
8 |
青果物 |
17,660 |
+2.9% |
9 |
緑茶 |
15,904 |
+36.8% |
10 |
菓子(米菓を除く) |
14,635 |
+5.6% |
アルコール飲料においては、日本酒やウイスキーの人気が高まり、特に欧米市場での需要が増加しています。日本のクラフトジンやリキュールも注目を集めており、多様な酒類の輸出が好調です。
清涼飲料水は日本独自のフレーバーや機能性飲料が海外で人気を集めており、特にアジア市場での需要が急増しています。
このランキングは、日本の食品・農林水産物輸出の多様性と、世界市場での日本食品の評価の高さを示していると言えるでしょう。
同時に、ホタテ貝の輸出減少に見られるように、特定の品目や市場に依存することのリスクも明らかになっています。
今後は、さらなる輸出品目の多角化と新規市場の開拓が求められます。
- 国・地域別の輸出額および輸出品目ランキング
2024年1月から6月における日本の食品・農林水産物の国・地域別輸出額ランキングは、以下の通りです。
順位 |
輸出先(国・地域) |
金額(億円) |
前年同期比 |
1 |
アメリカ合衆国 |
1,156 |
+19.9% |
2 |
香港 |
1,032 |
-10.5% |
3 |
中華人民共和国 |
784 |
-43.8% |
4 |
台湾 |
736 |
+9.2% |
5 |
大韓民国 |
415 |
+16.5% |
6 |
ベトナム |
401 |
+22.0% |
7 |
タイ |
299 |
+17.2% |
8 |
シンガポール |
265 |
+0.6% |
9 |
オーストラリア |
149 |
+2.4% |
10 |
オランダ |
143 |
+20.2% |
中国へのホタテ貝(生鮮等)、なまこ(調製)、ウィスキーといった品目の輸出額が大きく減少した一方、アメリカ、ベトナム、台湾へのホタテ貝(生鮮等)の輸出額が増加しました。
また、アメリカへは日本酒、ソース混合調味料の輸出が大きく増加しています。
このランキングから、アジア太平洋地域が日本の食品・農林水産物輸出の主要市場であることがわかります。
今後は、各国の市場特性に応じた戦略的な輸出促進が求められるでしょう。
日本の食品・農林水産物の輸出品ランキング2023
2023年は、日本の食品・農林水産物の輸出は新たな局面を迎えた年でした。輸出総額は1兆4,541億円に達し、前年比2.8%増を記録しました。
これは10年連続で過去最高を更新する結果となり、政府が掲げる2025年2兆円、2030年5兆円という目標に向けて着実な一歩を踏み出しています。
2023年に輸出額が増加した主な品目は、以下になります。
品目 |
増加額(増加率) |
真珠(天然・養殖) |
+218億円(+92.0%) |
緑茶 |
+73億円(+33.3%) |
ビール |
+72億円(+66.6%) |
ソース混合調味料 |
+60億円(+12.4%) |
牛肉 |
+58億円(+11.2%) |
ぶり |
+55億円(+15.2%) |
清涼飲料水 |
+55億円(+11.3%) |
真珠については、4年ぶりに香港での国際見本市が開催されて以降、高品質で人気の日本産真珠の需要が喚起されたという背景があります。
一方、大きく輸出額が減少した品目は、以下の通りです。
品目 |
減少額(減少率) |
ホタテ貝(生鮮等) |
-222億円(-24.4%) |
さば |
-66億円(-35.2%) |
日本酒 |
-64億円(-13.5%) |
ウイスキー |
-60億円(-10.6%) |
ホタテ貝の輸出額が大きく減少した要因として、中国や香港による輸入禁止措置の影響が挙げられます。
また、2023年はさばの漁獲量が減少したことで、東南アジアやアフリカ向けの輸出が大幅に減少しました。
- 品目別の輸出額ランキング
2023年1月から12月における日本の食品・農林水産物の品目別輸出額ランキング(10位まで)は、以下の品目になっています。
順位 |
品目 |
金額(百万円) |
前年同期比 |
1 |
アルコール飲料 |
134,408 |
-3.4% |
2 |
畜産物 |
100,826 |
+4.1% |
3 |
ホタテ貝(生鮮・冷蔵・冷凍等) |
68,871 |
-24.4% |
4 |
ソース混合調味料 |
54,355 |
+12.4% |
5 |
清涼飲料水 |
53,668 |
+11.3% |
6 |
真珠(天然・養殖) |
45,596 |
+92.0% |
7 |
青果物 |
44,445 |
-4.8% |
8 |
ぶり |
41,750 |
+15.2% |
9 |
菓子(米菓を除く) |
30,731 |
+9.8% |
10 |
緑茶 |
29,186 |
+33.3% |
2023年は、ホタテ貝の輸出額は大きく減少し、約700億円にとどまりました。中国による輸入禁止措置の影響が顕著に現れた結果と言えるでしょう。
一方、外出機会の増加や健康志向の高まりにより、清涼飲料水の需要が増加した年にもなりました。
- 国・地域別の輸出額および輸出品目ランキング
2023年1月から12月における日本の食品・農林水産物の国・地域別輸出額ランキングは、世界各地での日本食品の需要動向を反映しています。
以下、上位10カ国・地域の輸出額と主要輸出品目を詳しく見ていきましょう。
順位 |
輸出先(国・地域) |
金額(億円) |
前年同期比 |
主な輸出品目 |
1 |
中華人民共和国 |
2,731 |
-14.8% |
ホタテ貝(生鮮等) |
2 |
香港 |
2,365 |
+13.4% |
真珠(天然・養殖) |
3 |
アメリカ合衆国 |
2,062 |
+6.4% |
ぶり |
4 |
台湾 |
1,532 |
+2.9% |
りんご |
5 |
大韓民国 |
761 |
+14.1% |
アルコール飲料 |
6 |
ベトナム |
697 |
-3.8% |
粉乳 |
7 |
シンガポール |
548 |
-1.1% |
アルコール飲料 |
8 |
タイ |
511 |
+0.9% |
かつお・まぐろ類 |
9 |
オーストラリア |
310 |
+6.2% |
アルコール飲料 |
10 |
フィリピン |
306 |
-2.6% |
合板 |
2023年の時点では中国が1位でしたが、ホタテ貝の輸入禁止措置の影響もあり、水産物の輸出が激減した年になりました。
一方、韓国やアメリカへの輸出が増えた年でもあり、ソース混合調味料、アルコール飲料、ホタテ貝などの品目が人気となっていました。
2030年に向けた日本の食品輸出目標と取り組み
日本政府は、2030年までに農林水産物・食品の輸出額を5兆円にするという目標を掲げています。この目標設定の背景には、国内市場の縮小という現実と、海外市場の拡大という期待があります。
また、政府は目標達成に向けて「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を策定し、様々な施策を展開中です。主要な取り組みとしては、輸出重点品目の選定と品目別の戦略策定、輸出産地の育成と体制強化、輸出先国の規制への対応、物流・商流の構築支援などが挙げられます。
少子高齢化が進む日本では、食品市場の縮小が避けられない一方、アジアを中心とした新興国では、経済成長に伴い高品質な日本産食品への需要が高まっています。
2030年の5兆円目標達成は決して容易ではありませんが、官民一体となった取り組みと、日本の食品の高い品質や安全性を武器にすることで、着実に前進することが期待できるでしょう。
- 輸出額5兆円目標の背景
日本政府が掲げる2025年2兆円、2030年5兆円という農林水産物・食品の輸出額目標は、国内市場の縮小と海外市場の拡大という現実を踏まえた戦略的な決断です。
この目標設定の背景には、過去の輸出実績と成長率の分析があります。2012年に5,000億円に満たなかった輸出額が、2021年に1兆円を突破するまでに9年を要しました。この実績を踏まえると、2030年までに5兆円を達成するというのは非常に野心的な目標といえるでしょう。
しかし、この高い目標設定には、農林水産業の成長産業化を加速させる狙いがあります。
輸出拡大が日本の農林水産業に与える経済効果は計り知れません。直接的な輸出収入の増加だけでなく、国内生産の拡大、雇用の創出、地域経済の活性化など、多岐にわたる波及効果が期待されます。
さらに、輸出向け生産の拡大は、国内市場向けの生産技術や品質管理の向上にもつながり、農林水産業全体の競争力を強化できるでしょう。
国際市場における日本産食品の競争力強化は急務です。高品質で安全な日本の農林水産物は海外で高く評価されていますが、価格面での競争力に課題があります。官民が一体となって、生産性の向上、コスト削減、付加価値の創出が不可欠です。
- 輸出拡大実行戦略の主要施策
日本の農林水産物・食品輸出を飛躍的に拡大するため、政府は「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を策定し、様々な施策を展開しています。この戦略の核心は、従来の「プロダクトアウト」から「マーケットイン」への転換です。
まず、輸出産地の育成に注力しています。全国各地で輸出に適した産地を選定し「輸出産地リスト」として公表中です。このリストは、海外バイヤーとのマッチングや輸出促進施策の重点的実施に活用されています。さらに、産地間連携を促進し、年間を通じた安定供給体制の構築を目指しています。
また、27品目を輸出重点品目として選定し、それぞれに2025年の輸出額目標を設定しています。例えば、牛肉は1,600億円、日本酒は600億円といった具体的な数値目標を掲げ、その達成に向けた戦略を立案・実行中です。
マーケットイン輸出への転換を促進するため、JETROやJFOODOなどの機関を通じて、海外市場の情報収集や販路開拓支援も強化しています。JETROのウェブサイトでは、各国の規制情報や市場動向、商談会情報などを一元的に提供中で、オンライン商談会やバーチャル展示会など、デジタル技術を活用した新たな販路開拓支援も展開中です。
さらに、GFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)では、輸出に意欲的な生産者や事業者を登録し、専門家による輸出診断や商談会の開催など、きめ細かなサポートを提供しています。
輸出関連規制の緩和と手続きの簡素化も着実に進行中です。例えば、輸出証明書の発行手続きの電子化や、輸出先国の規制に対応するための技術的サポートの強化などが実施されています。また、輸出先国との規制協議を積極的に行い、輸入規制の緩和や撤廃を働きかけています。
- 輸出拡大を支える技術革新と研究開発
日本の食品・農林水産物の輸出拡大を支える重要な要素として、技術革新と研究開発が挙げられます。これらの取り組みは、生産性の向上、品質管理の強化、そして国際競争力の強化に大きく貢献するでしょう。
まず注目されるのは、スマート農業技術の導入による生産性向上と品質管理の取り組みです。ロボット技術やICTを活用した超省力・高品質生産を実現する新たな農業形態が、急速に普及しつつあります。例えば、環境制御システムや自動灌水システムを備えたスマートグリーンハウスでは、作物の生育環境を最適にコントロールすることで、計画的な生産と収量の飛躍的な向上が実現可能です。
鮮度保持技術や新たな輸送方法の開発も着実に進んでいます。例えば、日本通運グループが開発した「空飛ぶ鮮魚便」や「フレッシュ青果便」は、従来よりも長時間鮮度を保持できる革新的な輸送サービスです。これらのサービスにより、これまで輸出が困難だった「足の速い」生鮮食品の海外展開が可能になりつつあります。また「Hybrid ICE」という新しい製氷技術を用いた生鮮物流システムも注目を集めており、輸出圏の拡大に貢献しています。
さらに、輸出向け品種改良と知的財産保護の取り組みも重要です。農研機構を中心に、海外市場のニーズに合わせた新品種の開発が進められています。同時に、これらの新品種を知的財産として保護するため、品種登録制度の活用や海外での品種保護出願の支援も強化されています。
現在、AIやIoTを活用した物流効率化と品質管理システムの導入や、ブロックチェーン技術を用いたトレーサビリティシステムの開発も進んでおり、食品の安全性確保と信頼性向上に寄与するでしょう。
そして、産学官連携による輸出向け技術開発の推進も活発化しています。農林水産省の「輸出促進のための新技術・新品種開発事業」では、大学や民間企業と連携し、輸出に適した新品種の育成や新たな栽培技術を開発中です。また「国際競争力強化技術開発プロジェクト」では、海外市場のニーズに対応した革新的な技術開発が進められています。
- 国際競争力強化のための取り組み
日本の食品・農林水産物の輸出を拡大し、国際競争力を強化するためには、多角的なアプローチが必要です。特に重要な取り組みについて、ここから解説していきます。
まず、日本産食品の安全性と品質に対する厳格な取り組みです。日本でも世界と同様にHACCPシステムを導入し、生産から加工、流通に至るまでの各段階で徹底した衛生管理を行っています。さらに、GAP(農業生産工程管理)の普及により、農場レベルでの食品安全、環境保全、労働安全等の向上にも努めています。
次に、地理的表示(GI)制度を活用したブランド価値向上策が挙げられます。GI制度は、地域ならではの特性を持つ農林水産物・食品のブランド価値を知的財産として保護する仕組みです。例えば「神戸ビーフ」や「夕張メロン」などがGI登録されており、海外市場での差別化や高付加価値化に役立っています。今後は、より多くの産品のGI登録を推進し、日本産品の国際的な評価向上につなげていく方針です。
輸出先国の規制への対応強化と二国間交渉の進展も重要な取り組みです。各国の輸入規制は年々厳しくなる傾向にあり、これに適切に対応することが輸出拡大の鍵となります。日本政府は、輸出先国との間で規制緩和や検疫条件の緩和交渉を積極的に行っています。
海外での日本食材プロモーション活動の強化も進められており、日本貿易振興機構(JETRO)や日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)を中心に、海外の食品見本市への出展支援や、現地レストランとのタイアップイベントなどを実施中です。
さらに、観光と連携した輸出促進策も注目されています。「食」は日本を訪れる外国人観光客の主要な目的の一つであり、訪日経験が日本食品の購買につながるケースが多いことがわかっています。そこで、インバウンド観光と食品輸出を連携させた取り組みが進行中です。
例えば、日本の農村地域での体験型観光と、その地域の特産品の輸出をセットで推進する「農泊」プロジェクトなどが展開されています。
- 持続可能な輸出体制の構築に向けた課題
まず、輸出産地の形成が重要です。地域ぐるみで生産・流通体制を輸出向けに転換することが求められます。具体的には、輸出先国の規制に対応した栽培方法の導入や、輸出用の選果・梱包施設の整備などが挙げられます。また、複数の産地が連携して年間を通じた安定供給体制を構築することも重要です。
環境に配慮した生産と輸出の両立も重要な課題です。有機農産物や持続可能な方法で生産された食品への需要が世界的に高まっています。そのため、化学肥料・農薬の使用削減や、再生可能エネルギーの導入など、環境負荷を低減する取り組みが求められます。
輸出関連人材の育成と確保も喫緊の課題です。語学力だけでなく、国際的な商習慣や食品安全規制に精通した人材が必要です。そのため、大学や専門学校と連携した輸出人材育成プログラムの開発や、JA(農業協同組合)グループ内での輸出専門人材の育成などの取り組みが進められています。海外経験豊富な人材のUターン採用や、外国人材の活用も検討されています。
さらに、為替変動やエネルギー価格上昇などのリスク対策も欠かせません。為替変動に対しては、為替予約の活用や現地通貨建て取引の導入などが考えられます。エネルギー価格上昇に対しては、省エネ設備の導入や輸送ルートの最適化などが有効です。
また、地政学的リスクに備えて、輸出先の多角化も重要な戦略となります。
食品輸出に必要となる書類・手続き
日本から食品・農林水産物を輸出する際には、様々な書類や手続きが必要となります。これらは輸出先国の規制や要求に応じて異なるため、事前に十分な確認が不可欠です。
以下は、農林水産省が公開している「農林水産物・食品輸出の際に輸出国政府当局が要求する可能性のある証明書等」の一覧になります。
証明書類等 |
農産物 |
畜産物 |
林産物 |
水産物 |
加工食品 |
植物検疫証明書 |
〇 |
|
〇 |
|
〇 |
輸出検疫証明書 |
|
〇 |
|
|
〇 |
施設認定/衛生証明書 |
〇 |
〇 |
|
〇 |
〇 |
原発事故関連証明書 |
〇 |
〇 |
|
〇 |
〇 |
自由販売証明書 |
〇 |
〇 |
|
〇 |
〇 |
海外の残留農薬基準値への対応 |
〇 |
|
|
|
〇 |
食品添加物規制への対応 |
〇 |
〇 |
|
〇 |
〇 |
その他 |
輸出数量の届出(お米)など |
|
|
漁獲証明書など |
|
参考:農林水産省「農林水産物・食品輸出の際に輸出国政府当局が要求する可能性のある証明書等」
ここでは、一般的に必要とされる書類や手続きについて解説します。
- 各種証明書
日本の食品・農林水産物を輸出する際には、様々な証明書が必要となります。これらの証明書は、輸出品の安全性、品質、原産地などを保証し、スムーズな輸出手続きを可能にする重要な書類です。
【植物検疫証明書】
植物や植物性産品を輸出する際に不可欠な書類です。この証明書は、輸出する植物が病害虫に感染していないことを証明し、植物防疫所が発行します。輸出検査の申請は、NACCS植物検疫関連業務(APS)を通じてオンラインで行うことも可能で、手続きの効率化が図られています。
【輸出検疫証明書】
畜産物の輸出に必要となる証明書です。これは、動物検疫所が発行し、輸出する畜産物が衛生的に処理され、安全であることを証明します。
【施設認定・衛生証明書】
食品を製造・加工する施設が輸出先国の衛生基準を満たしていることを証明するものです。特に、EUやアメリカなど、厳格な衛生基準を持つ国々への輸出には不可欠です。この認定プロセスは複雑で時間がかかる場合があるため、早めの準備が重要です。
【放射性物質検査証明書・産地証明書】
農林水産物・食品の安全性と原産地を保証する書類です。東日本大震災以降、一部の国や地域では、日本からの輸入品に対してこれらの証明書を要求しています。
【自由販売証明書】
輸出する食品が日本国内で合法的に流通・販売されていることを証明するものです。特に加工食品の輸出時に要求されることが多く、都道府県等の自治体が発行します。
【漁獲証明書】
まぐろ類及びめろの輸出に必要な書類です。水産物が合法的に漁獲されたことを証明し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の防止に貢献します。
これらの証明書の取得には、それぞれ異なる手続きと申請先があります。詳細は農林水産省「日本国内の輸出に係る制度」をご参照ください。
- 各種対応・届出
日本の食品・農林水産物を輸出する際には、様々な対応や届出が必要となります。これらは輸出先国の規制や要求に応じて異なるため、事前に十分な確認と準備が不可欠です。
【海外の残留農薬基準への対応】
日本と輸出先国では農薬の使用基準や残留基準が異なる場合が多く、日本の基準を満たしていても輸出先国の基準に適合しないケースがあります。例えば、EUは世界で最も厳しい農薬規制を設けており、日本の生産者にとって大きな課題です。この問題に対処するため、農林水産省は主要輸出先国の残留農薬基準値を調査し、情報を公開しています。
【食品添加物規制への対応】
日本で使用が認められている添加物が、輸出先国では禁止されている場合があります。特に、着色料や保存料については国によって規制が大きく異なるため、注意が必要です。輸出業者は、製品の配合を見直したり、代替添加物を使用したりするなどの対応が求められます。
【米の輸出に必要な届出】
食糧法の規定に基づき、商業目的で米を輸出する場合は、事前に最寄りの農政局管内の窓口へ輸出数量の届出を行うことが義務付けられています。これは、国内の食料安全保障の観点から設けられた制度です。ただし、個人的使用のための非商業的な輸出や、レトルト米飯、米粉などの加工品は届出の対象外となっています。
【輸出飼料関係の手続き】
飼料や飼料添加物を輸出する場合、輸出先国の要求に応じて、衛生証明書の添付や製造事業場の登録が必要となることがあります。これらの手続きにより、輸出する飼料が日本の法令に基づいて適切に製造されたことを証明できます。
【輸出承認の手続き】
しいたけ種菌、うなぎの稚魚や、キャビア、アオザメ、イチイといったワシントン条約対象貨物など等、輸出貿易管理令に定められた貨物については、経済産業大臣の輸出承認が必要となります。これは、資源の保護や国際的な取り決めに基づく規制に対応するためのものです。
食品輸出で知っておくべき国際基準
日本の食品・農林水産物を海外に輸出する際、国際的な食品安全基準を理解し、遵守することが不可欠です。ここでは、輸出に携わる事業者が必ず知っておくべき主要な国際基準について解説します。
- CODEX(コーデックス)
- HACCP(ハサップ)
- FDA(エフディーエー)
これらの国際基準や規制は常に更新されているため、輸出に携わる事業者は、最新の情報を継続的に収集し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが重要です。
また、輸出先国の文化や消費者嗜好にも配慮しつつ、これらの基準を遵守することで、日本の高品質な食品・農林水産物の国際競争力を高めることができるでしょう。
- CODEX(コーデックス)
コーデックス規格とは、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)によって設立された「コーデックス委員会」が策定した規格です。食品安全と品質に関する国際的な基準として広く認知されています。
法的拘束力を持ちませんが、WTO(世界貿易機関)協定において国際的な参照基準として認められており、各国の食品規制の基礎となっています。
コーデックス委員会が策定する規格は、大きく2つのタイプに分けられます。
- 農畜産物の生産から消費者の食卓に至るまでの全段階で遵守すべき安全基準
- 食品の品質に関する規格で、国際貿易の公平性を促進するために重要
具体的には、特定の食品に含まれるべき成分とその量、製造方法、表示に関する指針、検査方法、さらには食品貿易に必要な輸出証明の方法や手続きなどが規定されています。これらの規格は、科学的な根拠に基づいて策定され、定期的に見直しが行われています。
日本の食品輸出業者にとって、コーデックス規格の理解は非常に重要で、多くの輸出先国がこの規格を参考にして自国の食品規制を設定しているからです。例えば、残留農薬の最大許容量や食品添加物の使用基準などは、コーデックス規格を基に定められていることが多いです。
また、コーデックス規格は、食品の安全性に関する国際的な議論の場としても機能しています。新たな食品技術や健康リスクに関する科学的知見が得られた場合、それらを反映させるための議論が行われます。
このため、食品輸出に携わる事業者は、コーデックス委員会の動向を常に注視する必要があります。
- HACCP(ハサップ)
HACCPとは、食品の製造過程における潜在的な危害を特定し、その管理を徹底することで食品の安全性を確保するシステムです。食品安全管理の国際基準として、広く認知されている手法になります。
HACCPの特徴は、最終製品の検査に頼るのではなく、製造工程全体を通じて継続的に監視・記録を行う点にあります。これにより、問題が発生した際の迅速な対応や、製品の安全性に関する信頼性の向上が可能です。
日本では2021年6月から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理の実施が義務付けられました。この制度化により、日本の食品輸出における国際競争力の強化が期待されています。
HACCPの導入には、7原則12手順というアプローチが用いられます。具体的には、危害要因の分析、重要管理点の決定、管理基準の設定、モニタリング方法の確立、改善措置の設定、検証方法の確立、記録と保存方法の設定などが含まれます。これらの手順を通じて、食品安全に関するリスクを体系的に管理することが可能です。
また、HACCPを導入することにより、食品事故のリスク低減だけでなく、従業員の衛生意識の向上、生産性の改善、取引先からの信頼度アップなど、様々な副次的効果も期待できます。
日本の食品事業者がHACCPを効果的に活用することで、世界に誇る日本の食品・農林水産物の輸出拡大につながるでしょう。
- FDA(エフディーエー)
FDA(Food and Drug Administration)は、アメリカ合衆国の食品医薬品局を指す略称です。アメリカ国内で流通する食品、医薬品、化粧品、医療機器などの安全性を監督し、規制する重要な役割を担っています。
日本の食品・農林水産物をアメリカに輸出する際には、FDAの規制を十分に理解し、遵守することが不可欠です。
食品を製造、加工、包装、保管する施設はFDAへの施設登録が必須で、2年ごとに更新する必要もあります。また、輸入食品の事前通知(Prior Notice)も義務付けられており、食品がアメリカに到着する前に、その詳細情報をFDAに提出しなければなりません。
FDAは、輸入食品に対して厳格な検査を行います。特に注意すべき点として、残留農薬、食品添加物、アレルゲン表示などがあります。例えば、日本で使用が認められている農薬や食品添加物が、アメリカでは禁止されているケースもあるため、事前に十分な確認が必要です。
FDAの規制に違反した場合、深刻な結果を招く可能性があります。最悪の場合、製品の押収や輸入禁止、さらには刑事罰が科される可能性もあります。そのため、FDAの規制を遵守することは、単なる法的要件ではなく、ビジネスの継続性を確保するための重要な戦略と言えるでしょう。
食品の輸出拡大に向けた取り組み事例
日本の食品・農林水産物の輸出拡大に向けて、全国各地の事業者が革新的な取り組みを展開しています。
ここでは、農林水産省の「令和5年度輸出に取り組む優良事業者表彰」を受賞した事業者の事例を紹介します。
注目すべき点は、これらの事業者が単に既存の製品を海外に売り込むだけでなく、現地のニーズや文化に合わせた製品開発や販売戦略を展開していることです。
また、デジタル技術を活用したマーケティングや、持続可能性を重視した生産方法の採用など、時代の要請に応じた取り組みも見られます。
- 株式会社木内酒造1823(茨城県那珂市)
株式会社木内酒造1823は、200年の歴史を持つ老舗酒造メーカーでありながら、革新的な取り組みで日本の食品輸出を牽引しています。同社の輸出戦略は、伝統と革新のバランスを巧みに取り入れた点です。
同社の輸出への取り組みは、1996年に日本初のクラフトビール製造を開始したことに端を発します。この先進的な動きが、後の海外展開の基盤となりました。1999年から本格的に輸出を開始し、現在では40カ国以上に輸出実績を持ち、常時25カ国以上と取引を行っています。
木内酒造の輸出戦略の核心は「日本らしさ」の追求です。地元茨城県の農家と協力し、日本の原料を活かした商品開発を行っています。例えば、茨城県産の大麦からモルトを自社生産するなど、原材料の内製化にも積極的に取り組んでおり、高品質かつ付加価値の高い製品を生み出すことに成功しています。
- 株式会社ナンチク(鹿児島県曾於市)
株式会社ナンチクは、鹿児島県曾於市に本社を置く食肉加工会社で、1963年の設立以来、高品質な食肉製品の生産と販売に取り組んできました。
同社の輸出への取り組みは、日本の食肉産業における先駆的な事例として注目されています。
ナンチクの輸出戦略の核心は、「鹿児島和牛(KAGOSHIMA WAGYU)」と「かごしま黒豚(KAGOSHIMA KUROBUTA)」というブランド力の高い食材を活かした高付加価値商品の開発にあります。特に、和牛の輸出に関しては、2007年に香港向けの輸出を再開して以来、着実に市場を拡大してきました。
同社の輸出への取り組みで特筆すべきは、早くから海外市場の開拓に乗り出したことです。2009年にはシンガポール向けの牛肉・豚肉輸出を開始し、その後もタイやマカオなど、アジア市場を中心に輸出先を拡大しています。
- 株式会社稲庭うどん小川(秋田県湯沢市)
株式会社稲庭うどん小川は、秋田県湯沢市に拠点を置く老舗うどんメーカーです。1982年の創業以来、伝統的な製法を守りつつ、革新的な取り組みで日本の食品輸出を牽引しています。
同社の輸出への取り組みは2016年に本格化しました。当初は海外展示会への参加から始まり、現在では29カ国以上に輸出実績を持つまでに成長しています。
特筆すべきは、コロナ禍においても積極的にオンライン商談を活用し、3年間で150社以上との商談を実施したことです。この努力が実を結び、輸出額は着実に増加しています。
輸出拡大に向けた取り組みとしては、JETROやJFOODOなどの公的機関を積極的に活用し、海外バイヤーとのマッチングや展示会への出展を行っています。さらに、自社のSNSを活用した情報発信にも力を入れ、海外消費者との直接的なコミュニケーションを図っています。
- 株式会社ヤマサン(京都府宇治市)
株式会社ヤマサンは、京都府宇治市に本社を置く老舗食品メーカーです。
同社は、伝統的な日本食品の魅力を世界に発信することを使命とし、積極的な海外展開を行っています。特に抹茶や和菓子など、日本の伝統的な食文化を代表する商品の輸出に力を入れており、その取り組みが高く評価されています。
ヤマサンの輸出戦略の特徴は、世界各国の市場特性に合わせた柔軟なアプローチです。2022年現在、卸事業として世界60か国以上に販路を拡大し、越境EC事業ではアメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、東南アジアなど主要市場でのプレゼンスを確立しています。
ヤマサンは、デジタルマーケティングにも積極的で、自社のSNSを活用した情報発信や、海外向けの自社ECサイトの運営など、直接消費者とつながる取り組みを行っています。
- 株式会社ADVANCE INTERTRADE(福岡県福岡市)
株式会社ADVANCE INTERTRADEは、2020年に福岡市で設立された比較的新しい企業ですが、その革新的な取り組みと急速な成長により、日本の水産物輸出業界で注目を集めています。
同社は、高品質な鮮魚と活魚の輸出に特化し、短期間で大きな成果を上げました。
鮮度とサイズにこだわった仕入れを行い、輸出先の要望に合わせた細やかな対応を実現しています。特に、活魚の輸出においては、独自の輸送技術を開発し、高い生存率を維持しながら遠距離輸送を可能にしました。
同社の輸出戦略の特徴は、アジア市場に特化したアプローチにあります。特に、シンガポールや香港などの高所得国をターゲットとし、日本の高品質な水産物の価値を積極的にアピールしています。また、現地の食文化や消費者嗜好を深く理解し、それに合わせた商品提案を行っている点も評価されています。
今後の輸出には多角化・分散化が必要
日本の食品・農林水産物の輸出は近年着実に成長を続けており、2021年には初めて1兆円を突破しました。しかし、さらなる成長と安定性を確保するためには、輸出戦略の多角化・分散化が不可欠です。
従来の主要輸出先である中国、香港、アメリカに加え、中東や東南アジアなどの新興市場への展開が注目されています。特に、アラブ首長国連邦(UAE)は物流のハブとしての機能と日本食への関心の高まりから、有望な市場として期待されています。
また、為替変動リスクへの対応も、輸出の安定性を確保する上で重要な課題です。円安が進行する中、輸出競争力は高まっていますが、急激な為替変動は事業計画に大きな影響を与える可能性があります。このリスクを軽減するために、為替予約の活用や現地通貨建て取引の導入など、多様な手法を検討する必要があります。
そして、従来の主力品目に加え、日本の食文化や技術を活かした新たな商品の開発が求められています。健康志向の高まりを背景に、機能性食品や植物由来の代替肉製品など、これからは新たな市場ニーズに応える商品開発が必要になるでしょう。
【記事監修者】
瀧井 朝永
食品管理者/飲食店オーナー。
鰻屋で調理経験を積み、その後割烹料理屋での経験を経て、パブやレストラン、ダイニングバーなど複数の飲食店を経営。現在は、東京・日暮里で「くいもの居酒屋Foods bar」を営む。
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